top of page
宇野あずさ_03.jpg
​Spectrum

2018

​ミクストメディア

 「Spectrum(スペクトラム)」とは、日本語では「連続体」「範囲」あるいは「分光」を意味し、ラテン語に由来する。この「Spectrum」は、見えるもの、現れるものを意味する「像」のほか、「幻影」や「亡霊」なども指す。本作品は、暗闇から光源までの深い陰影のグラデーションを写し取った映像インスタレーション作品である。

 可知的な観念に対して、「漂流物」を曖昧かつ規定できないイメージのメタファーとし、人間の想像が及ばない領域に眼差しを向けさせることで、私たちの世界が世界の周縁の集積によってできていることを示唆した作品である。昼間に見る何気ない場所のありふれた風景も、夜にはひっそりと暗闇に沈み、別の表情を見せる。ぽつりと灯った街灯が、暗い地面に仄かな光を投じる様子、薄暗い海岸に佇む漂流物が、強風でざわざわと揺れるところに差し込むライトの光など、光の届く僅かな場所にだけ特別なものが立ち表れているかのような、叙情的で、しかしどこか通常とは異なるようなミステリアスな情景を切り取っている。時に状況を故意に演出しようとさえしているこの情景の違和感は、ハイライトと暗闇の中間帯のどちらでもない曖昧なエリアであることに起因している。

 見えないもの、知覚できないものに対しては、必然的に想像力が働くが、昼間に見ればお馴染みの景色が、夜、照明によって暗闇から一部だけが僅かに覗いているという状況を引き起こすことで、人間のコントロール外の出来事を誘発させている。光と闇の間に広がる曖昧な境界と同様に、ある一点を特定とするのではなく、連続する変化そのものを捉えた行為とその結果が映像であり、理想を投影しきれない現実の風景のドキュメントとして、「“ひっ”繰り返す風景」が立ち上がり、想像を掻き立てるのでる。

© 2023 著作権表示の例 - Wix.com で作成されたホームページです。

bottom of page